ハンドヘルドコンピュータ







HC series (EPSON)
ハンドヘルドコンピュータの歴史は、1982年エプソン(当時信州精器)から発売されたHC-20のヒットによって始まった。HC-20の当時の人気は相当なもので、専門雑誌「Oh! HC」(ソフトバンク)まで発行た。海外ではHXシリーズとして販売された。その後HC-40、HC-88などが相次いで発売され人気を博した。

Oh! HC

HC-20

HC-20は、幅290mm、奥行215mm、厚さ44mm、重さ1.7kgで、発売当時の価格は138,600円、プリンタを内蔵しておりオプションによりマイクロカセットかROMカートリッジを本体の大きさを変えることなく装着できた。マイクロカセットは、ソフトウェアによりコントロール可能で、プログラムおよびデータのセーブ、ロード、べりファイ、サーチをすべて自動的に実行できた。また、バーコードリーダ・インターフェイスを内蔵しているので、バーコードで表示してあるデータを読み取りHC-20にそのままデータとして入力することができた。グラフィックスは120×32ドットを持ちLCDに表示された画面はそのまま内蔵されているプリンタにハードコピーすることができた。


HC-20の内部




HC-40

HC-88 と同時期(1984年)に発売された。日本語入力はできなかったが、非常にスリムだった(厚さ34mm)。CP/M と BASICを搭載。ディスプレイは手前に持ち上がり、プリンターは取り外し可能。キーボードは特別のものが用意され、容易に置き換えることができた(標準のキーボードが装着されたのがHC-40で、特殊用途のキーボードが装着されたのがHC-41)。プリンター部分も取り外せる。HC-88と同様、エプソンカラーが洒落ている。128,000円。




HC-88

HC-80/88 は日本語機能を持った最初のハンドヘルドコンピュータ。日本語を使うためには底にユニットを装着する必要があった。HC-88はHC-80にユニットを標準で装着したものである。






Tandy M 100,NEC PC8201 シリーズ

 世界的に最も有名なハンドヘルドコンピュータであるTandy社のTandy model 100と日本で非常に愛されてたNECのPC8201は共に京セラが製造した姉妹機である。この他、オリベティ社もM10というマシンを京セラからOEM供給を受けヨーロッパと米国で発売した。またあまり知られていないが京セラ自身もKyotronic 85 という名前でこの機種を販売した。ただそれぞれの機種のスペックは非常に異なっている。
 アメリカでは、未だ現役でmodel 100 を使い続けるユーザグループが存在するなど、こうしたハンドヘルドコンピュータは今でも非常に魅力的である。。


PC-8201/TRS-80 model100 Famiry
PC-8201日本で発売されたモデル。アイボリーホワイト、メタルカラー、ワインレッドの3色のモデルがあった。
PC-8201aNECがアメリカで販売したモデル。
PC-8300NECがアメリカで販売したモデル。32KbiteRAM標準搭載。モデムを内臓可能。
TRS-80 model100アメリカでの標準モデル。モデム内臓。8KbiteRAM。
TRS-80 model102model 100 よりやや薄く軽量。24KbiteRAM。
TRS-80 model20016桁表示のできる折り畳み型の液晶ディスプレイに変更。
Olivetti M10オリベッティから販売されたモデル。米国版と欧州版がある。
Kyotronic 85
(KC-85)
京セラブランド(KYOSEI)で販売されたモデル。非常に稀少でその存在もあまり知られていない。


TRS-80 model 100 (Tandy)

 最も有名なハンドヘルドコンピュータ。京セラにより作られTANDY社が発売した。世界的にみた場合、ハンドヘルドコンピュータの歴史はこのマシンのヒットで幕をあけた。1.7kgのボディにモデムを搭載し、ワープロ機能やスケジュール管理機能を搭載したこのマシンは新聞記者などの間で大流行し、あまたの会見会場はこのマシンで書いた記事を電話で転送する記者の姿であふれた。米国で発売された機種のため、カナを使用することはできないが、その代わりに独語。仏語など各種国際文字や色々なグラフィック文字を使用できた。ソフトウェアとしては、電話回線を活用するための"TELECOM"、マイクロソフト社製の"model 100 BASIC"、ワードプロセッサの機能を持つ"TEXT"、簡易スケジュール管理プログラム"SCHEDL"、住所録プログラム"ADDRESS"の5つが、ファームウェアとして内臓されている。これらは電源投入時のメニューにおいてカーソルで選択することができる。
 後に、多少軽量化した model 102 が発売された。アメリカでは、未だ現役でmodel 100 を使い続けるユーザグループがいくつか活動している。Club 100参照。



Model 100用 ゲームソフト

Wine-red type


Metal-colour type

PC8201 (NEC)

PC8201 は、1983年NECから発売されたマシン。京セラのOEM。重さ1.7kg、8ビットCPU「8085」のCMOS版「80C85」(クロック周波数2.4MHz)を搭載している。アイボリーホワイト、メタルカラー、ワインレッドの3色。アルカリ単3電池4本で18時間という持続時間は、エプソンのHC-20 の50時間(内蔵Ni-Cd電池)には及ばないが、本格的な携帯端末として要求される持続時間を満足していた。TRS-80 model 100 (Tandy)の日本バージョンにあたる。キーボードはTANDY model100の方がフラットになっており、8201の方がどちらかというと持ち運びより卓上での使いやすさを重視したデザインになっているといえる。左側にはRAMカートリッジ若しくはCRTアダプター用の拡張スロットがあるのが model100 と異なっている。CRTを接続すると80×25行、グラフィックは640×200ドットを表示することができ、普通のパーソナルコンピュータのように扱えることになる。通信ユーティリティ、ワープロとも英文、かなのみに対応。漢字ROMを接続することによりCRT上に漢字を表示することができた。バックアップ機能があり、オペレーションの電池が切れた後も内部電池により26日以上メモリ内容を保持した。

表示能力は、テキスト表示:40桁×8行。グラフィック表示:240×64ドット。電源は、単3電池4本、専用ニッカド電池パック、ACアダプタの3電源方式。
300(W)×215(D)×35(H)mm。後部 61(H)mm。1.7kg。138,000円。







M10 (Olivetti)

 イタリアのオリベッティ社はタイプライターの製造で有名だが、電卓やパソコンなどの計算機も発売していた。同社の製品の特徴は何といってもその斬新なデザインにあり、そのため熱烈な愛好家も多い。同社の製品の多くは日本製であるが、いずれもオリベッティ社らしいこだわりがあふれている。
 M10は、オリベッティから販売されたモデル。他の姉妹機と比較してデザインや色合いが非常にユニーク。米国向けとヨーロッパ向けがあった。ディスプレイは手前に持ち上がる。後部にRS-232Cがあるが、他の機種と比べ上下が逆になっている。

Olivetti calculator



KYOTRONIC 85 (Kyocera)

京セラ自らが販売したモデル。発売数は非常に少なく、ほとんど存在を知られていないマシン。形はNEC の8201と近いが、拡張スロットはない。
マシンの背面。一番下に BY KYOSEI. JAPAN の文字が見える。




キヤノンハンドヘルドコンピュータ

X-07

 1983年3月発売。A5サイズコンピュータながら強力なBASICと様々の特徴的な機能を持っている。重さはわずか480グラム、単三電池4本で駆動。内臓のディスプレイは20文字×4行の文字表示、120×32ドットのグラフィック表示が可能であり、しかもモニターテレビにつなぐとカラー表示ができる。キャッシュカードサイズのユーティリティカードにROMとRAMを内臓している。
 周辺機器は、キャノンならではのユニークなものが用意されていた。まず増設用のRAM、ROMカード。クレジットカードサイズの小さなカードで、このカードを本体裏側にセットすることで簡単にメモリの増設ができた。また増設は本体内でも行えた。また、E.T.の愛称を持つオプティカルカプラ。このカプラは赤外線により、X-07同士や周辺機器とのワイヤレスデータ通信に使うもので、これを使えば配線コードの山から開放された。市販のRS-232C機器と接続するためにRS-232C交換アダプターが用意されている。また、専用のプリンターとしてボールペン式カラープロッタプリンタやサーマルプリンタがサポートされている。セントロニクス仕様のパラレルインターフェイスも持っており、市販のプリンタを使用することもできた。拡張ポートに拡張ステーションを接続すれば、家庭用カラーTVをディスプレイとしてしようすることもできた。
当時の価格は6万9800円。








Ai Note IN-3000

世界で初めて手書きオペレーションシステムを導入したPDA。数式を手書きで入力すると計算もする。
1 手書き計算機能 2 漢字表示・ワープロ機能 3 作画機能 4 スケジュール機能 5 住所録機能 6 世界時計機能 7 カレンダー機能 8 文字清書機能 9 機能拡張、ICカード(オプション) 10 プリンター(オプション)
サイズ 253(W)×194(D)×19(H)mm。740g (電池含まず)。65,000円。ハンディプリンター 33,000円。


Advertizement of X-07
Brochure of X-07

森谷、創研プランニング X-7 東洋経済
1600円。
ビジネス・プログラム・ライブラリー Canon X-07
廣済堂出版 780円。
戸内順一 プログラムアラカルト
アスキー出版局 2500円。


その他のハンドヘルドコンピュータ


WorkSlate (Convergent Technologies)

今はなきカリフォルニア州サンタクララのConvergent Technologies社の製品。1983年すなわち Tandy M100と同時期に発売されたマシンである。テープドライブ、モデム、スピーカー、プリンターポートを内蔵。ビジネスに必要なソフトウエアを全て内蔵しており、使用方法は内蔵のテープで聞くようになっている。スリムで洗練されたデザイン、丸いキー、すばらしい色合いは、むしろ未来のコンピュータと見間違う。



IS-11 (SORD)

 ソード社は、1970年に東京板橋区大山町に設立された。ソフトとハードの融合という意味からソードと名付けられたといわれる。設立当初は、ミニコンやディスクのインターフェース、フロッピーディスク装置などを生産していたが、1974年に世界初の8ビット・マイクロプロセッサ8008を搭載したマイクロコンピュータ「SMP-08」をビジネスショウに出展するとともに、同年5月にはイン8080を搭載した、ソード社初のマイクロコンピュータ「SMP-80/20」を発売する。さらに1975年12月には日本初のマイコンキットSMK-80も発売するなどコンピュータ業界の草分け的存在であった(ソード社の開発の歴史と沿革参照)。1985年 には東芝と資本提携し、1999年には東芝パソコンシステム(株)と社名を変更し、現在に至る。
 IS-11はソード社が1984年 1月に発売した統合ソフトウェアを内蔵したブックサイズのコンピュータ。当時の価格は6万8千円だった。


PC-2500 (Sharp)


4色カラープロッタプリンタ内臓のA4サイズハンドヘルドコンピュータ。24桁×4行、150×32ドットフルグラッフィック表示のディスプレイ搭載。プリンタなどの接続や通信が可能なシリアルインターフェース機能装備。85,000円。





FP-200 (Casio)

1983年7月に発売されたCasioのハンドヘルドコンピュータ。CPUは80C85。単三電池4本で駆動。液晶画面は20桁8行。160×64ドットのグラフィックも可能。キーボードはパソコンなみのサイズになっており、非常に打ちやすい。ROMでBASICとCETL(Casio Easy Table Language)という簡易言語が搭載されている。このCETLは、データの縦横集計、分析、編集などの機能に加え、並べ変え、検索などの機能を持ち、対話形式で操作ができるようになっているのでBASICを習得しなくても、在庫管理や、顧客管理、売り上げ集計など各ユーザの仕事に応じた利用ができる。シリアル、プリンター、カセットのインターフェイスコネクターがついている。
310(W)×220(D)×55.5(H)mm。1.54kg(本体のみ)。69,800円。






FX-801P (Casio)

Casioのハンドヘルドコンピュータ。FP-200とは異なり、むしろポケコンにプリンターとCasette recorder をつけたものといえる。単三電池6本で駆動。

Z88 (Cambriddge Computers)

シンクレア社の創業者であるシンクレア卿は会社の倒産によりすべての権利をアムストラッドに売り渡し、新たにCambridge Computersを起こした。Z88は、シンクレア卿が同社で1987年に製造し、ロンドンのコンピュータショウに出品した機種である。Z88は、ただ携帯しやすいコンピュータではなく本当に役に立つ最初のコンピュータともいわれている。
重量はちょうど 900gでA4サイズ、キーはゴムで覆われている。LCD ディスプレイをもち RAM または ROM カードを3つ装着できる。オペレーティングシステムは非常に優れており、作業中のプログラムを待機させることでいくつもの作業を同時にこなすことができる。本体にダイアリー、BASIC、ワープロ、表計算機能を装備している。
安くて使いかってのよい機械として現在でも英国で愛用されている機種である。





NC100 (Amstrad)

Amstrad はヨーロッパのメーカー。"Amstrad"の名前は創立者の名前に由来する(Alan Micael Sugar Trading)。パソコンの分野で成功した企業でシンクレア社を買収したことでも知られる。
NC 100 は使いやすいソフトウェアが内蔵されている小型の高性能マシンであるが、製品自体は日本製である。
N100は非常にユーザーフレンドリーなマシンである。解説書の表紙にはサポートの電話番号や時間、電話料金が書かれている。次のページには社長のAlan Suger氏の手紙が入っており、自分自身が最初のセクションを担当したと書いてある。

SPEC OF NC100
LCD Scren 215(W)×35(H) mm
English 70 characters×8 lines
Power Supply Batteris : 4 AA cells
Lithium Baattery : CR2032
Evternal input voltage : DC6V 300mA
Size295(W)×208(D)×27(H)mm
Weight1.06kg(with battery)


For more information about Amstrad computers, look at Mr.Tim Surtell's nice site:
"Tim's Amstrad NC Users' Site : http://www.ncus.org.uk/"

Brookvale Bazaar (Sydney Austraria)

1999年2月にオーストラリアのシドニーに出張した際現地のコレクターに教えてもらったBrookvale Bazaarという店で購入。店内にはいろいろながらくたがある。コレクターにとっては非常に魅力的な店。但しN100自体はその後日本のフリーマーケットでも発見した。かなり日本にも出回っていたのかもしれない。





Source : Joerg Woerner

CC-40 (Texas Instruments)

1983年に発売されたテキサスインスツルメンツ社初のハンドヘルドコンピュータ。ROM BASICを搭載しスイッチを切ってもデータを保持することができた。単3電池4本で200時間使用可能。当時の価格は$249.95。

SPEC of CC-40
Weight: 22 oz. / 600 grams
CPU: TI TMS 70C20, 2.5MHz
Memory: 6K-18K RAM, 34K ROM
Display: 31 character LCD display
Peripherals: HX1000 printer/plotter
HX1010 Printer 80
RS232/PIO interface
300 baud modem
Ports: Cartridge port
Proprietary "Hex-Bus" interface
OS: ROM BASIC
Inside of CC-40




JR-800 (National)

National (松下通信工業)のB5サイズハンドヘルドコンピュータ。テキスト表示は32桁×8行、グラフィック表示は192×64ドットが可能で横32〜254行、縦8〜255行までの仮想スクリーンを設定することができるので大きな表を作ることができる。グラフ機能も充実。関数機能も19種持ち周辺機器も充実している。単3乾電池4つで約70時間使用可能。厚さ34mm-幅260mm-奥行143mm 710g。当時の価格128,000円





Pasopia mini (IHC-8000)

 Pasopia mini は、1982年、エプソンのHC-20と同時期に東芝から発売されたハンドヘルドコンピュータ。主にオプションのミニプリンタインターフェイスを接続して使った。このプリンタはドットマトリクス感熱式で横に24字印字することができた。また、ミニインターフェイスはプリンタ以外にいくつかのインターフェイスを内蔵している。RS-232Cインターフェイス、カセットインターフェイス、TVインターフェイス、セントロニクス準拠パラレルインターフェイスなどがある。オプションのTVインターフェイスで家庭のテレビやグリーンディスプレイと接続すると、32桁×24行の表示が可能となった。RAMは4KBあり、最大16KBまで拡張することができた。電卓モードがあり、PRINT文を使わずにかなりの関数を扱うことができた。単三電池3本で約300時間使用できた。CPUはCMOS 8bit CPU。 195mm(W)-88mm(D)-25mm(H), 360g(電池込み)。 54,800円。






PC-2001 (NEC)

NEC のハンドヘルドコンピュータ。

TC-200 (IXO)

IXO社のハンドヘルドコンピュータ TC 200。モデムと自動ダイアル機能(Autodialer)が内蔵されている。1983年米国製。シリアルNO.5675。


BYTE magazine APRIL 1982